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BLACK JACK を語れ! タイトルロゴ
  第81話 『宝島』

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 あったかもしれない結末として。

 BJは冷たく言い放った。「死ね」
 「この空と海と大自然の美しさのわからんやつは――――――」
 「生きる値打ちなどない!!」

 スカンク草井は倒れたまま動かない。手下どもは見苦しく助けを求めた。

 「ま、待ってくれ。見捨てないでくれ。助けてくれ。助けてくれよぉ」
 「痛ぇよう、痛ぇよう、なんとかしてくれよ先生よぉ〜」

 悪党どもは、かきくどき、懇願し、汗と涙で顔をぐちゃぐちゃにし、子供のようにBJにすがりついた。
 あまりに情けない姿にあきれ返ったか、BJは少し緊張を解いた。

 「ちっ。悪党がなんてザマだ」「落ち着け。暴れるな。毒が早く回るぞ」
 「でかいの。ナイフを持ってたな。傷口を切り開いて毒を吸い出せ」

 BJも左腕を噛まれていた。

 「それから傷口をしばって、船に戻るんだ」
 「私は先に戻って無線で助けを呼んでおく」

 自分の傷口から毒まじりの血を吸い出していたBJの背後で動きがあった。

 「待ちなよ…先生よ…」

 暗闇にうっそりと草井が立ちあがった。雲が切れ、月明かりがその姿を照らした。血と泥にまみれ、毒で赤黒く腫れあがった凄まじい顔のまま、草井はよろりと近づいてきた。

 「へ…へへ…へへへへ。先生よ…やられたよ。あんたも…相当の…悪党だな。
  はなっから…俺達をハブで始末するつもりで…ここまで案内しやがったな?」

 苦痛に顔をゆがめ、草井は続けた。

 「わざと…注射器なんかを…俺達に…捨てさせたな?。
  えぇ?。抜け目のねぇ…天才外科医の…先生よぉ!」

 眉をひそめて静かに見返すBJ。なにも言わない。草井はさらに毒づいた。

 「へ…へへ。な…なにが、美しい大自然だ。綺麗な事ぬかしやぁがって。
  その裏じゃあ…俺達を殺す段取りを…考えてやがったのかよぉ!。あぁ?」
 「美しい自然が大事だよなぁ…俺達のような…悪党は…何人くたばろうが…
  かまやしねえよなぁ、人殺しの先生よぉ!」

 ふっと草井が力を抜いた。

 「…確かに…俺がウカツだったぜ…油断ならねぇ先生を相手によ…だがなぁ!」
 「こうまで…コケにされて…あんたをそのまま行かせるわけにゃぁいかねぇん
  だよぉ!。見やがれ!」

 草井の手にいつのまにか握られているのは発破。導火線はすでに火を放っている。
 手下達がヒョータンツギになって悲鳴を上げ、地面に突っ伏した。
 草井の顔がまたゆがんだ。

 「い…痛てぇ…ちくしょうめ。ダメか?…俺はもうダメなのか、先生よ?…。
  へ…へへへ…へへへへへ。くそおぉっ!。先生よぉ、ちょいとつきあって
  もらうぜ。あの世までな!」

 草井が猛然と飛び掛ってきた。不意をつかれ一緒に倒れこむBJ。もはや正気を失いつつある悪党は、超人的な力でBJを押さえ込んだ。BJの鼻先で導火線が火薬のにおいを上げて燃え、へへ、へへへと笑いつづける草井の顔がBJに迫った。

 (危うしBJ!。明日に続く!……のか?)

(00/11/01)


 あお向けのまま両腕を押さえ込まれたBJは、足を振り上げた。
 馬乗りになっている草井の頭を狙おうと暴れるが、有効打が決まらない。
 かろうじてかすったキックが、草井のサングラスをはねとばした。
 サングラスにかくされていた血走った目がBJを見据えた。

 「へ へへ せいぜい暴れろよ先生…もうすぐオサラバよ…先生の大事な
  大自然とやらも道連れにな…。へへ へへ へへへへへ」

 悪党は、唇の片側を上げた嫌な笑いを浮かべ、BJをねめつけた。導火線の火が、草井の暗い瞳を照らした。BJはその瞬間を待っていた。
 
 いきなり草井が悲鳴をあげた。
 「ぎゃあああっ!。い、痛てぇ、目が見えねぇ。何をしやがった先生!」
 BJが吹きかけた、ハブ毒まじりの血が草井の目を襲ったのだ。

 草井が発破を取り落とした。男を突き飛ばしてBJは発破をノーバウンドで受けとめる。導火線の火はまさに発破の中にもぐりこもうとしている。
 時間がない。

 BJのアドレナリンが沸騰した。周りの音が遠ざかり、全ての動きがスローダウンした。
 がけっぷちまで走って、発破を海に捨てるか?。間に合わない。
 爆風から逃げるには?。この場にある頑丈な遮蔽物は?。
 BJにはそこしかない事がわかっていた。彼はためらいなく思いきり力をこめ、発破を斜めに投げ上げた。
 のたうつ草井をけとばして地面に這いつくばらせ、自分も倒れこむと土まみれのコートを頭からかぶった。

 発破は放物線の頂点に達し、くるくるまわりながらゆっくりと落ちて行き、白く丸い亀甲墓の向こう側に隠れ…
 (ミナさん。すまない)
 周囲が真っ白になり、次の瞬間強烈な衝撃と熱風が襲ってきた。
 男たちの頭の上を、ガレキがうなりを上げて飛び、周りの樹木にぶち当たっては枝を折った。BJの頭といわず肩といわず、しっくいのかけらやガレキがどかどかと降った。
 (ミナさん、すまない。眠りをじゃましたよ。
  …自然は強い。発破の穴もじきに癒されるだろう。だが、このどうしようも
  ない馬鹿どもは、それほど発破に強くないので、ミナさんに助けてもらったよ…。
  墓はきっとまた直しにくる。しばらくの間がまんしてくれよ…)
 最後に黒い土煙が、森や男たちいっさいをおおいかくした……。

 しばらく後、煌煌とした月明かりの元、山道を下るズダボロの一行があった。
 先頭に小男。次にギョロ目。でかいのがヒゲ男を背負い、顔に傷跡の走る男が最後に続く。
 それぞれ乱暴にキズの手当てらしきことをした様子が見える。

 ヒゲ男が意識を取り戻したらしく、うめき、身動きをし、薄く目をあけた。
 またしばらく後。ヒゲ男はようやくまわりの様子がわかってきたらしい。

 「先生よ…」        (間)

 「…殺さないのかよ…」   (間)

 「…格好つけるなよ……後悔するぜ……」
 「黙ってろ。回復しないぞ」

  (間)

 「なんでだよ…」

  (間)

 「―――この美しい島で、悪党に死なれるのはまっぴらだ。それだけだ。」

  (間)

 「それより。おい悪党、ちょっとあれを見てみろ。見えるか」

 BJの示す方を見下ろすと、小さな入り江と砂浜が見えた。
 月の青い光に照らされ、砂浜は水色、ときおり砂がきらきら白く光る。
 浅い入り江は薄い緑色から、深くなるにつれエメラルドグリーンへ、そして濃紺の海につながっていく。
 そして、不思議なことにエメラルドグリーンの入り江で鮮やかなピンクやオレンジ色の小さな光の群れがちらちら動くのだ。海の生物の光なのかもしれない。夜の宝石箱である。
 海の波は月光を反射して輝き、ゆったりとした潮騒が聞こえてくる。足元からは虫の声がする。
 遠くからは森の動物の泣き声もする。樹木と甘い花の香りが流れてくる。
 おだやかな島の夜である。

 「…へ へへ、なんだよ。こんなもん。ちょっと。ちっとも。
  へ ち、ちくしょうめ。なんでだよ。う、美しいじゃねえかよ。
  こんなもん。こんなもん。ちぇ。美しいじゃねえかよ。なんでだよ。
  綺麗じゃないかよ。うっ、うっ、うぉっ、おう、おう、おう――― 」

 BJはちらりと笑うと歩きだした。ボロボロの一行の行進が再開した。
 船着場までは、あとわずかだ。

(00/11/02)


 81話「宝島」では、私、つい暴走して長いのを投稿してしまいました。
 それというのも、81話が何か言わせたくなる力を持っていたからです。
 刺激された私、スカンク草井に憑依されて暴れました(危ないだろ >自分)。
 81話を未読の方、まあお読みください。スカンクの徹底した抜け目のない悪党ぶりが良いですよ〜。悪者が強くなければお話は面白くなりませんからなぁ。

>Cさん
 フォローありがとうございました。いやー、Cさんはきっとなにか
 コメント下さると思っていました。ありがたやありがたや。
 はい。前後編で、ヒキもあるんです。実態は、前編をあそこまで書いて睡魔に襲われ、続きが書けなくなったんですが。受けていただけましたら幸いです。二夜連続遅くまでかかって書いた甲斐がありました。

> 金沢さんの解釈(?)では、BJの「死ね」は、BJの心からの言葉
>ではないということですね。
> あまりひどい拷問をされたから、BJもついつい勢いで言って
>しまったんだろう、と(笑)。

 うーーん。「死ね」というBJの表情が微妙です。
 眉が下がりぎみで、類例のない、ちょっとイヤな表情なんです。
 この馬鹿どもは死ぬべし、と1〜2秒間は本気で思っていたかも知れません。

 でも、いくらなんでもBJが直接手を下したり、目の前の人間を見殺しにしちゃあまずいだろう、それをやっちゃあ連載が終わるだろうと思って、私の文では、全員助けることにしました。

 徹底した悪党のスカンク草井は、私の書いたような、あの程度のことでは、改心したり泣いたりはしないと思います。スカンクも
 「『宝島』はあれで完結なんだよ。こんな甘い脚本(ホン)で続きの芝居ができるかよ。ハードなタッチが台無しだろ。これだから素人はよ……」
 と怒っていました(と思う)が、無理に演ってもらいました笑。

(00/11/05)

(Uさんの投稿で、亀甲墓はマンガに描かれたよりもっとゴツゴツしたのを見たと聞き)

 「ごつごつ」とうかがって、私も写真が無いかとちょっとさがしてみました。

  http://www.asahi-net.or.jp/~LK5K-OOSM/hist_cult/kamekobo.html
 
 http://www.okinawatimes.co.jp/~o-times/spe/tuk981129.html

  http://yositune.ichinoseki.ac.jp/SATOK/pr/okinawa/okinawa.html

 などで、記事や写真が見つかりました。
 なるほど、BJのマンガに描かれたドーム状のものよりは、角張ったイメージになっていました。
 「かめこうばか」「きっこうばか」と読み、地元ではカーミナクーバカと呼ぶそうです。
 内部に数人が入れるほどの広さを持ち、建設には家一軒構えるほどの費用(数千万円)がかかるそうです。
 ただ、記事によると、過去の沖縄戦ではトーチカとして使われたり、内部に立てこもった人達の玉砕の舞台となったりと、悲しい歴史との結びつき抜きには語れないようです。

(00/11/08)

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